2017年2月28日火曜日

【山東の家】-静岡県浜松市

※竣工から8カ月、竣工写真を撮りましたので改めて事例紹介です。


【山東の家】

静岡県浜松市には天竜川という大きな河が流れ、その源流の山は美しい杉・桧の人工林として有名です。

「山東の家」は天竜の山のふもとに建つ、木こりさん家族の住まいです。

新しく区画分譲された敷地の西には小高い山、北側には製材所の敷地
と、周辺環境に恵まれた立地。

しっかりものの奥様と3人の可愛いお子さん、家族みんなでのびのび過ごせる家を目指しました。








2階建ての建物に1間(約1.8m)幅で下屋がついた間取り。

多角形になっているコーナー部分がこの家の特徴です。


下屋部分の外壁は杉板(下見板張り・ウッドロングエコ塗り)
2階建て部分の外壁はガルバリウム鋼板小波板(こげ茶・横張り)








玄関を開けると正面は洗面所→浴室、左手に玄関ホール、の2WAY。

浴室直結のアクセスを設けたのは

汚れて帰ってきた子供たちやご主人がまっすぐ脱衣場へアクセスできるように。








玄関ホールの床、式台は漆塗りです。

赤い弁柄で着色し、生漆(きうるし)で仕上げた床板は深いボルドー色。

上品で趣のある仕上げが好きで漆塗りの仕上げをポイントに入れることが多いです。

たくさんの人を迎え、見送る

そんな場所は空間も少ししつらえたいと思います。

住まい手さんが拾ってきてくれた小石も土間に据え、やさしい空間になりました。








上から見下ろした玄関ホール。

茶の間、家事室、洗面所、2階、といろいろな場へ繋がるジャンクションのようなスペースです。






玄関土間からホールを見ると、階段がナナメに横切ります。

2階に目を向けるとロフトの奥まで見通せます。



「ただいまーー」

と帰宅すると



「おかえりなさい!」

可愛い声が上からふってくる(のかな?)







そして階段の奥は家族団らんの場

奥様のご希望で畳敷きの「茶の間」スタイルです。










4/12角形に切りとったコーナー部は、仲の良いMさんご家族のイメージからどうしても挑戦してみたかった空間でした。

中央の八角柱を「樹の幹」になぞらえ、大きな木陰で休むような縁側をプレゼントしたかったのです。















木製建具は大工さんの手によるものです。

これからお庭も手を加え、この窓が緑であふれると一番の特等席になるはず。







薪ストーブはご主人の唯一のご希望。

左手はご主人の書斎、書斎はその奥で外部物置につながります。


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構造材は天竜の「フジイチ」さんに用意していただきました。

Mさんの切った木も「フジイチ」さんで製材されます。

山東の家は要所要所とてもきれいな材が使われています。

コストに制限があるのでもちろんすべての場所でいいものを使っているわけではありません。

いい材、ちょっと見劣りする材を混ぜながら段取りをしてくださった製材所。

その中から適材適所に材を配した棟梁。

そして、恐らくちょっといい材を使ってくれた棟梁。

皆さんの気配り+手間によって、設計者の範疇から離れたところでどんどん「いい家」になってくれた訳です。


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プランのお話に戻って。





茶の間の横にはキッチンです。

畳に座っている人と台所に立つ人の視線を近づけるため、

台所のフロアレベルは2段(36cm)下げています。





こんな風に。

家族みんなが思い思いの場所で過ごし、でも近い距離に感じる。

ご飯を食べて、お腹がいっぱいになったらごろん。

畳敷きの魅力を再認識した家づくりでした。








2階へ。

裏山の緑がまぶしいくらい贅沢な立地です(この写真は竣工時の5月撮影)


面積が限られているので、あえて間仕切りはつくりませんでした。

階段向こうの1室だけ思春期に突入するお兄ちゃんの個室。

後は家族の成長にしたがって仕切っていきます。








***

名称:山東の家

所在地:静岡県浜松市

延床面積:99.79㎡(30.18坪)

竣工:2016年5月



写真撮影:内山文寿 (一部、西久保美和 撮影)














2017年2月24日金曜日

材料を求めて②(岐阜編)

先日の岐阜遠征の続き。

栗のフローリングを下見した後は北へ北へ。郡上市白鳥町に向かいます。




訪ねた先は設計事務所勤めの時からお世話になっている白鳥林工協業組合さん。

岐阜県産の杉を使った幅ハギパネル「長良杉パネル」を使わせていただいています。
幅100㎜程に製材した杉の板を接着剤で剥ぎ合わせて作ったパネルです。



写真の電話台、そで壁に使っているのが長良杉パネル(五番町の家
無垢材では取りにくい幅の広い板を取ることができ、
無垢材と比べて暴れにくいので使い勝手が良い建材です。
見た目も集成材に比べて自然なのも気に入っています。

*****

ここで、一般的な集成材の板とはどう違うの?と思われるかもしれません。

こちらが集成材。
幅の狭い(3cmほど)材を細切れに剥ぎ合わせているので見た目が少し煩いです。
繊維方向にも継ぎ目が見えますね。
これはこれでいいのですが、やはり無垢板とは違う工業製品という印象。

長良杉パネルは100㎜幅の板を剥いでいるので一般的な集成材よりは見た目が自然です。
無垢板と集成材の中間のような材料と私はとらえています。

*****

それは工場へお邪魔しても感じる事。
工場で作られているものはベルトコンベアに乗って機械でオートマチックに作られている。
そんな風に感じるかもしれません。
私もそのようにイメージしていました。

ところが、実際は手作業の分量がとても多いのです。

糊を付けて1枚1枚並べて接ぎ合わす。
これ、全て手作業なのです。

一応パネルの規格サイズもあるのですが、
製作可能な範囲ならどのような寸法でも製作してもらえます。
考えれば分かることなのですが、このように人の手で作られるものだから
そのような対応をしてもらえるのだと思います。

山で人の手によって育てられた木は、
製材所でも人の手によって下拵えをされ、
現場で大工さんの手で仕上げられる。

私が携わっている木の家づくりはどの工程でも人の手や思いが加えられているのだ。
現場へ行って改めて気づいたことでした。

*****

さて、実は白鳥林工さんへお邪魔した目的は他にもありまして。

まずは広葉樹のパネルを見にいくこと。
前回伺った時にも見せていただいたのですが、ゆっくり見る時間が無かったので。


長良杉パネル以外にも、針葉樹は桧、唐松のパネルがあり、
広葉樹も栗、山桜、鬼ぐるみ等がスタンバイ。

テーブルの天板やちょっと気張りたい家具などに使いやすいと思います。
今進めている学文殿町の現場にも使ってみたいな、と考えています。


この他にも倉庫の中をウロウロ。


事前に「掘り出し物を見つけに伺います!」とお伝えしたものですから
白鳥林工の担当、石ヶ谷さん「何かあるかなーーー」と一生懸命探してくださいました。

お忙しい中申し訳なかったです。。
関西人のノリで何でもおねだりするのは考え物だと反省(笑)

さらに優しい石ヶ谷さん、後日掘り出し物情報をメール下さったのでした。
重ね重ねありがとうございました。
また懲りずに遊びに行こうと思います。






2017年2月19日日曜日

材料を求めて①(岐阜編)

家づくりに使う材料、カタログやWEBページで選ぶだけでなく

なるべく作っている方のもとへ伺って、自分の目で見たいと考えています。


お忙しい中工場の方へ案内いただくのですから恐縮もしますが、

住まい手さんへの説明も、実際自分で聞いた事、見たことなら

自信を持ってお話ができるように思います。



今回、岐阜へ行き2か所の工場へお邪魔したので

その様子をご報告したいと思います。


まずは可児市に工場のある小林三之助商店さんへ。

丸太が積まれている景色が圧巻ですね。

これは枕木用のブナやクリetc硬い広葉樹です。

小林三之助商店さんは枕木の製造、販売からスタートした会社

今、鉄道枕木の主流はコンクリート製になっていますが

支線や、鉄橋の上などはまだまだ木製の枕木が使われているそうです。

線路に使った後の枕木は外構などで使うのが人気ですね。

小林三之助商店さんでも扱っているのですが、

今回の目的は枕木でなくこちら。




栗のフローリングです。

栗は枕木の材料なので、丸太の芯から枕木を取り、

その側(がわ)でフローリングを取ります。



これからフローリングになる栗の板。



そこから表面を削った状態の栗の板。

この状態で節の有無や色目を見てA品、B品と仕分けします。

また、特別きれいなものは1枚ものに使われます。

***

1枚もの、というのは1.8mのフローリングをジョイントなしで無垢の木でつくったもの。
1.8mの長さの中で大きな節や傷が無い板は希少なのでコストは高くなりますが、
継ぎ目が少なく板の目も通るのでより重厚感が増します。

また、何枚かの板を継いで1.8mの長さのフローリングにしたものを「ユニ」といいます。
板のいいところを継ぎ足していくのでコストは抑えられます。

もうひとつ「乱尺」と呼ばれるタイプのフローリングもあります。
これは1.8mの長さでなくもう少し短い長さの物。


大工さんの貼る手間はかかりますが、継ぎ目の数はユニよりも少なくなります。

小林三之助商店さんでは上の写真のように455㎜~910㎜のものを

何種類か組み合わせて配送してくれます。


こうやって工場を訪ねると材の養生をはじめ、

目に見えにくい人の手間がとてもかかっていると感じられます。



次は可児市よりさらに北上し郡上市へ伺ったお話をしたいと思います。















2017年2月18日土曜日

竣工写真撮影

先週末は浜松へ行ってきました。

去年竣工した

「ひとつ屋根の家(浜松A邸)」

「山東の家(浜松M邸)」

の竣工写真の撮影立ち合いに。


竣工写真というのは

これまでのお仕事を紹介する大事な素材。

プロのカメラマンさんに撮影をお願いしますが

お任せしっぱなしではなく、設計者として

構図、明るさの度合いetc

を一緒に確認しながら撮影します。



まずは「ひとつ屋根の家」訪問

撮影にぴったりの良いお天気でした。



撮影はこんな感じで進められます。

なかなか大胆な撮影ですね!

(それでもいい感じに写真は撮れていて、さすがプロ!)


「ひとつ屋根の家」の撮影は浜松在住の写真家
大関正行さんにお願いしました。


2日目は「山東の家」の撮影

なのですが、

その前に石牧建築さんの山の加工場へお邪魔しました。

こちらの撮影も合わせてお願いするため。



il bosco(※伊語=森)という名前のついた工房です。

まさに森の中の工房、なのです。




何度もお邪魔していますが、

今回は敷地の一番奥に大工さんたちの

休憩小屋が出来ていました。

途中までつくりかけていたのは知っていましたが

なんと年末年始のお休みの間に

石牧さんのお父様が残材だけで仕上げたそうです。



棟梁の写真も撮影。

撮影は天竜区出身の写真家内山文寿さんにお願いします。

それぞれの家のカラーにあった写真家さんにお願いしようと

今回は敢えて別々の写真家さんにお願いしました。

内山さんは山の写真も撮られる方で

「山東の家」の住まい手さんとも親しいのです。



「山東の家」での撮影も和気あいあいと。

合間をついて私もiPhoneでパシャッと。


階段吹抜け越しの古建具・アンティーク照明。





「山東の家」の住まい手Mさんは、
実は木こりさんなのです。

この日はMさんが管理されている山へも連れて行っていただきました。

遠くには浜松の街並みが見えます。

浜松は山と街が近いです。

私の住む西宮もまた山と街が近い。

距離だけで言うと西宮の方が近いのですが、

でも山の奥行きで言うと

天竜の山は深いな、と思います。

植林され、手入れされた杉と桧の山をかかえ

浜松という街は地元の木で家を建てるのに

とても適した街だと改めて思いました。


最後に「山東の家」に絡む3人で。

左から
石牧さん(大工)
Mさん(クライアント・木こり)
私(設計)













2017年2月16日木曜日

解体現場より


学文殿町の家、解体が始まりました。


床をめくって土台や大引きの傷み具合をチェックします。

解体前にも床下に潜って調査をしていたので

だいたい予想通りです。

コストを抑えるため、床を張り替えない、
もしくは既存の床の上に新しい床を張る
という方法も検討しましたが
こうやって明るい中、再度チェックができる
という意味では一旦床をめくるのが一番安心です。




実は解体の費用は全て壊してしまう方が安いくらいなのです。

手壊しで解体する様子を見ていると
それもそうだな、と納得ですね。
丁寧に壊していっていただいています。



もともと、綿壁だった仕上げをめくると
阪神淡路大震災の頃の爪痕が痛々しい。

改めて被災住宅なのだと感じます。



今回一番被害が大きい場所のひとつが浴室周りの土台、柱脚。

腐朽菌(+白蟻もかな?)の被害がひどいです。
劣化の教科書に載せたいくらいです…。

原因は浴室のタイルの割れを修繕しないで使っていたため。
水がまわって見事に朽ちていますね。

こうなると、大きな地震の力には耐えられず
浴室の位置や、その他の耐力壁の量によっては
倒壊する可能性がとても高くなります。

古い家に住まわれている方は
「いつか改修するからその時修理すればいいや」
と、タイルの割れ、コーキングの切れ等を
放置してしまいがちです。
しかし、劣化は一日一日進んでしまいます。
放っておいて、このような状況になると
構造材の入れ替えが発生して
改修工事自体も大がかりになります。

DIYでシールを打つのでもいいので
水が入っていかないようお手入れすることが
家の寿命を延ばすためには大事な事だと思います。





2017年2月11日土曜日

学文殿町の家 着工

学文殿町の家、着工しました。




工事の安全を祈願し、建物の四隅と水廻りをお酒で清めます。




大工さんと住まい手さん、お酒をまき、一礼します。


翌日からは解体工事が始まりました。

新旧の床仕上げ。


築57年の住宅なので、途中で手が加わっています。高齢の先住者にはPタイルの床板は硬くなってカーペットを敷いたのでしょうか。

普段は使わない新建材も古びてくるとちょっと可愛らしくみえます(笑)
柄も市松柄で遊んでいますね。
今は「シンプル」に仕上げることがいいような風潮ですが果たしてそれだけでいいのか、この古い家を見ると、ふと考えてしまいます。




そして、解体2日目の朝。

誰もいない現場に寄って朝日の入り方を確認。北東の台所、思ったよりたっぷり陽が射します。よしよし。




浴室も東側なので朝日が燦々。

ここは開口を絞ろうと思っていたのですが、少し見直しをした方がいいかな。






2017年2月5日日曜日

金継ぎ

かれこれ1年半ほど通っている金継ぎ教室。

まだまだ練習中ですが

欠けたり割れた器が蘇るのは

本当に楽しい作業です。






今日は金継ぎの工程の終盤。

継いだ器に銀を蒔く(まく)工程。


まずは赤い漆を継いだ跡の上をなぞるように塗ります。

これはこの後蒔く銀の接着剤です。

赤い漆を使うのは

銀がきちんと乗っているか

鮮やかな色がついている方が分かりやすいからです。


銀が沈んでしまわないよう

薄く塗るのがポイント。





こちらが銀紛。

金継というと金のイメージが強いですが

金はかなりお高いので銀で。

(ちなみに金粉の価格は8000円/gほど)






これが銀蒔きをした状態。

この状態で室(むろ)に入れて

乾燥させます。

漆は湿気が無いと乾かない

特殊な塗料(であり接着剤)。

室(むろ)という湿度の安定したお部屋で乾かします。


「お部屋」といっても

実はプラスチックの衣装ケース(笑)

プラケースの中に金継ぎした器と

塗れ雑巾を入れておけば

湿気で漆が乾きます。



この後、「紛固め(ふんがため)」といって

生漆で銀を定着させる作業をし、

最後に表面を磨いて完成!です。


漆の世界、とても面白いです。





2017年2月1日水曜日

珈琲と


外でお仕事をする事が多いです。

環境を変えるといいプランが浮かんだり。集中できたり。

今日は時間調整で小さなドーナツチェーン店へ。



3種類のドーナツと珈琲だけを提供するお店。

シンプルでいいですね。

私なら珈琲とシュークリーム(とエクレア)だけのお店をやってみたいな。

なんて妄想してみたり。

皆さんは珈琲に何を合わせるのが好きですか?

アンパン。なんかも合うなぁ…。